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間接強制決定 [民事執行法]

判例 平成17年12月09日 第二小法廷決定 平成17年(許)第18号
要旨: 不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制決定をするには,債権者において,債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り,債務者が現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はない

不作為債務に関して、事前に間接強制決定をなしうるか否かについては、古くから学説上争いがあり、最近の民事執行法改正によっても問題が残されたままであった。
比較的有力な見解は、不作為義務に違反するおそれが明白である場合には間接強制決定をなしうるとしていた。しかし、本判例は、間接強制決定に基づいて金銭執行を行うには執行文付与手続が必要であり、ここで不作為義務違反の立証を要するから債務者の保護に欠けるところはないとの理由で「不作為義務に違反するおそれ」があれば足り、それが明白であることを要しないとして上記有力見解を明確に否定している。
「違反のおそれ」がどのような場合を指すのかについては、今後の実務の積み重ねを見守るほかないが、不作為義務違反をほのめかす債務者の言動があれば足りるということになるのだろうか。


民事執行法181条に定める法定文書の性質 [民事執行法]

平成17年11月11日 第二小法廷決定 平成17年(許)第22号 担保不動産競売申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

「法181条1項柱書きは,「不動産担保権の実行は,次に掲げる文書が提出されたときに限り,開始する。」と規定し,法182条は,「不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては,債務者又は不動産の所有者(中略)は,担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。」と規定している。以上の各規定によれば,法は,担保権実行の申立ての要件としては,換価権の原因である担保権の存在を証明するものとして定める法定文書の提出を要求する一方,法定文書の提出さえあれば,担保権の存在について実体判断をすることなく,競売手続の開始を決定することとし,担保権の不存在,消滅等の実体上の事由は,債務者又は不動産所有者の側からの指摘を待って,執行抗告等の手続で審理判断するという構成を採っているものと解される。
 抗告人は,本件申立てにおいて,法181条1項3号の「担保権の登記(中略)のされている登記簿の謄本」として本件登記事項証明書を提出しているところ,本件登記事項証明書には抗告人を根抵当権者とする本件根抵当権登記が記載されているのであるから,本件登記事項証明書は同号所定の法定文書に当たるというべきである。
 なお,本件登記事項証明書には本件所有権移転登記の記載もあるが,その登記原因は「譲渡担保の売買」であり,譲渡担保権を取得したというだけでは本件不動産の所有権が確定的に抗告人に移転しているということはできない。したがって,本件所有権移転登記があるからといって,本件根抵当権が混同により消滅したということもできないし,本件登記事項証明書が法定文書に当たらないものということもできない」

 根抵当権者が不動産競売を申し立てようとしたところ、根抵当権者が譲渡担保権者(登記簿上は譲渡担保を原因とした所有権移転登記が経由されている)でもあったことから、申立が却下されたのに対し、執行抗告が申し立てられた事件である。
 本判決は、法定文書が提出された以上は担保権の存在に関する実体判断に踏み込まずに開始決定を行ったうえで、担保権の存否については債務者が執行異議ないし執行抗告で争うべきものと解している。
 しかし、後の執行異議ないし執行抗告において担保権の不存在を理由に開始決定が取り消されるのは、開始決定において担保権の存在に関する判断が内包されていることが前提になっているからだという指摘(中野「民事執行法」新訂4版331頁)が重要である。
 本判決が「なお、・・・・」として担保権の存否に関する実体判断に踏み込んでいるのは、実体判断を全く排除して形式的判断に徹することもまた出来ないことを示したものではないだろうか。
 法定文書に関しては、抵当証券に関連した多数の判例もある。後日、詳しく検討するつもりである。
 


執行力と法人格否認の法理 [民事執行法]

判例 平成17年07月15日 第二小法廷判決 平成16年(受)第1611号 第三者異議事件

「第三者異議の訴えは,債務名義の執行力が原告に及ばないことを異議事由として強制執行の排除を求めるものではなく,執行債務者に対して適法に開始された強制執行の目的物について原告が所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有するなど強制執行による侵害を受忍すべき地位にないことを異議事由として強制執行の排除を求めるものである。そうすると,第三者異議の訴えについて,法人格否認の法理の適用を排除すべき理由はなく,原告の法人格が執行債務者に対する強制執行を回避するために濫用されている場合には,原告は,執行債務者と別個の法人格であることを主張して強制執行の不許を求めることは許されないというべきである。
(中略)所論引用の前掲最高裁昭和53年9月14日第一小法廷判決は,本件と事案を異にし,本件に適切でない。論旨は採用することができない。」

第三者異議訴訟における法人格否認の法理を適用を認めた最高裁判例である。
執行力拡張について法人格否認の法理が適用されるか否かについては、引用されている最高裁昭和53年9月14日判決(以下、53年判決という)がこれを否定したものとされていた。本件判例は「事案を異にする」としているが、どこが違うのか。
53年判決の事案は、第一審で敗訴した被告会社の関係者が、債務支払を事実上免れるようと、控訴審係属中に新会社を設立して、旧会社の資産と営業の殆ど全部を新会社に引き継いだため、原告が勝訴確定判決につき新会社に対して執行文付与の訴えを提起したというものである。執行文付与の訴えの場合には適用が否定され、第三者異議の訴えでは適用が認められるというのはなぜなのか。
ひとつ考えられるのは、執行文付与の訴えの性質である。執行文付与の訴えにおける審理の対象は、承継執行文付与のための承継の事実といった執行文付与要件の存否に限られ、実体上の請求権の異議事由を主張することは許されないとされている。(最高裁昭和52年11月24日判決)他方で第三者異議の訴えでは、「所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利」の存否が審理されるのであって、まさに実体上の権利に関する審理がなされることになる。
このような手続の違いからすれば、最高裁は実体上の権利の有無が審理される手続においてのみ、そのような手続が保障されている場合にのみ「法人格否認の法理」の適用を認めているのではないかと考えられる。しかし、そうだとすれば、それは「執行力の拡張だから」適用がないのではなく、端的に「執行文付与の訴えだから」適用がない、ということではないだろうか。


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