「履行がないこと」の証明責任 [民事訴訟法]
履行遅滞による損害賠償請求の発生要件のうち、債権者に1)履行期の定めがあること2)履行期が経過したこと、の主張責任・証明責任だけを負わせ、3)履行期に履行がないことの主張責任・証明責任については反対事実である3-1)履行期に履行の提供をしたこと、の主張責任・証明責任を債務者に負わせる、との見解には解決困難な難点がある。
上記1)2)だけを請求原因として記載した訴状が提出され、口頭弁論期日に答弁書を提出しないまま被告が欠席した場合には、条文上は必要とされている3)の要件の主張が全くなされないまま、履行遅滞による損害賠償請求権の発生が認められることになる。
この難点を解決する方法として主張責任と証明責任が分離する場合があることを認めることが考えられる。3)履行がないことの主張責任は債権者が負い、3-1)履行の提供をしたことの証明責任は債務者が負うと考えるのである。
このように考えると「履行の提供があったかどうか真偽不明である=履行の提供がなかったかどうか真偽不明である」という状態になった場合、履行の提供はなかったことに擬制されるから、3)の要件が擬制されることになる。これは主張責任を残し、証明責任だけが転換されているのに他ならないが、このように考えたからといって不都合はない。
参考文献:「要件事実論と民法学の対話」など多数
2005-11-30 00:12
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